
地元企業による事業説明と資産運用のコツをプロが伝授
2009年11月7日、「横浜IRセミナー」が横浜市中区桜木町の日石横浜ホールで開催された。昨年のリーマンショックをきっかけに、各企業をとりまく経営環境は厳しい状況となっている。このような時こそ資産運用のノウハウを知ってもらおうと、神奈川新聞社が主催した。今回が初開催となる同セミナーは3部構成で行われ、第1部では講師に株式評論家の木村佳子氏を迎えて「知って得する! 株式投資」と題した基調講演を、第2部では神奈川に本社を持つニフコ、ツクイ、アルテサロンホールディングス、千代田化工建設の4社によるプレゼンテーション、第3部では林文子横浜市長による講演と充実した内容となった。地元企業の事業説明に熱いまなざしを向けていた200人ほどの参加者たちは、木村氏が語る今後の市場動向予測に耳を傾け、林市長の人生体験を交じえた男女共同の主張に聴き入っていた。
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第1部に基調講演を行った株式評論家の木村氏は、「株式投資で一番難しいのは売りのタイミング。個人投資家の約6割がなんらかの損を抱えて市場にいる」と実態を説明。加えて世界の主要国の経済状況を外観し、この先の展開について予測した。
「各国とも出口戦略は取れていないが、アメリカはようやくプラス成長に達した。アメリカの年率GDPが改善すれば、日本にも恩恵がある。また数年後には中国のトップが代わり、ブラジル特需も起こる。日々のニュースを聞く中でそのあたりを気にしてほしい」とアドバイスも。
「種まきを上手にすれば成果も上がる。一番の仕込みのタイミングは周りが様子を見ているとき。競走で例えると最初に走っていく人は100人中3人。続く人は14人、それを見て動く人が35人。最初の3人になるのは難しいが、続く14人にならなければならない。周りが動きにくいときに買うことが成功のコツ」と投資の秘訣を語った。
「意識の高い投資家は株価の上下ではなく『企業の本質価値の推移』に目を向ける。今の日本には悪いニュースが多いが、敗戦からの成長は世界有数。横浜にはグローバル企業も多く、投資家が応援をすれば必ずいいアイデアが出てくる。中国などから観光客が多くなれば新たな産業構造が生まれる可能性もある。2012年6月ごろまでには各国とも明るいニュースが増え、夢のある経済状況になっているのでは。展望の持てる投資先企業と出会って」と熱いエールを送った。
好調の自動車関連に加え、新規事業にも期待
ニフコは自動車分野向けのプラスチック製品や工業用ファスナーなどを中軸とする東証1部の独立系メーカー。
櫻井専務は「日系自動車メーカーとの取引においてトップシェアを有しており、現代、フォルクスワーゲン、ダイムラーなどの外資メーカーともパイプがある。中国や韓国では従来力を入れてきており今後も引き続き注力するほか、北米やメキシコなど自動車生産国のほとんどに工場を持っており、将来は南米も含めたグローバル展開をしていく。また、小型車に30以上のアイデアを搭載した『アイディアカー』も好評で、主婦目線で商品開発を行う女性技術者を増強している。ハイブリッド車や電気自動車に関しても、従来ガソリン車では使えなかったプラスチック部品が生きてくるなど、ビジネスチャンスの拡大ととらえている」と前向きに語った。
第2四半期の決算についても「期初予想は10億円の赤字だったが、実際は18億近い黒字を達成した。要因としては日本およびアジアで予想以上の収益向上があったことに加え固定費の前倒し削減が挙げられ、通期見通しの上方修正や下期増配も発表した」と好調さをアピールした。
今後については「スリムな体質を維持しつつ、新規事業、特に子会社のシモンズが展開しているベッド関連事業にも期待している。高齢化に伴い睡眠に対する関心が高まっているが、安定した睡眠を可能にするベッドシステムを提案し需要増を見込んでいる。アジア23カ国が事業対象で高級ホテルでの採用事例も多く、大きな成長市場と感じている」と今後の展望を語った。
福祉関連サービスを展開するツクイは、もともとは土木建設会社。津久井副社長は「社長が母の認知症という出来事を通じて福祉の重要性を痛感したことがきっかけ。『福祉事業部』を立ち上げて訪問入浴サービスを行ったところ、大変好評だったため介護を本業にすることを決意した」と福祉サービスの原点について語った。
「現在、在宅介護・有料老人ホーム・人材開発を3本の柱として進めており、中でも重点を置いているデイサービスは、お客さまに最良のケアを提供することはもちろん、その家族にも時間を有効活用できるといったメリットもある。また、デイサービスでは複数のスタッフで複数のお客さまを見る態勢となるため、経済的負担の軽減にもなる」と事業の内容を説明。
続けて「総人口が減っていく中、65歳以上の比率が上がって市場は拡大している。全国展開しているデイサービスでは毎年50拠点の新規出店を計画している。経営のスピードを重視し、子会社やフランチャイズ展開を一切せずすべて直営で行っており、高い介護技術を持つ人材の育成にも力を入れていく」と語った。
昨年介護事業に参入して、25周年を迎えた。「来年3月期の業績予想については4期続けての増収増益を目指している。デイサービスは順調に伸びており、さまざまなニーズに応えるためには収益体質の強化が欠かせない。介護は24時間365日要求されており、真心を持って『人が人にかかわりあう』姿勢は変わらない」と今後の展望を訴えた。
冒頭、映像での企業紹介に続いて吉原社長は「当社は東京・神奈川を中心に『Ash』というブランドを核とした複数の美容室チェーンを展開している。美容業界はまだ大手の寡占化が進んでいないため拡大の余地が大きい。現在の横浜市でのシェアは5%程度だが、将来10%にしていく」と目標を掲げた。
また「料金体系で三つのグレードのすみ分けを行っており、清潔感やクリーンなイメージなどを通して幅広い客層へ来店を促している。競合サロンよりも高い技術力の提供はもちろん、『美容師こそが経営資源』と考え、海外からスタッフを招いての技術交流や、年配のお客さまにも楽しんでいただける話題づくりや教養についても教育している。社内では生涯にわたって美容の現場で仕事ができるような環境の整備にも取り組んでいる」と教育への真摯な取り組みを語った。
業界の問題点である「従業員の独立」についても「『暖簾分け型フランチャイズ方式』を採用しており、店舗や設備は変えずに店長に経営者になってもらっている。店長にとっては物件・資金面での支援や仕入れのメリットを持ちながら独立ができ、顧客の流出も防げてグループ全体でメリットを受けられる」とグループでの美容室経営の強みを語った。
最後に「リーマンショック以降は客単価を700円下げたが、約7%増客している。どれだけ景気が悪くなっても人の髪は伸び続けるということ。企業規模の大小ではなく『地域で一番愛されるサロン創り』を経営の中核に、その地域に長い間愛されるブランドづくりを目指していく」と地元密着の姿勢を強調した。
冒頭で村田総務部長は「私たちはメーカーでもゼネコンでもない。千代田化工建設は、液化天然ガスなどを生産する大規模なプラント(工場)の設計・建設を行う会社」と事業内容を説明。「最近ではロシア・サハリンで巨大プラントを建設し、設計・検証や建設部品管理をすべてコンピューターで行い、厳寒の中、40カ国・9千人を動員して5年がかりでプロジェクトを達成した。その高い技術力や安全性、環境への配慮が評価され、本年度に創設された『JAPANプロジェクト国際賞』国土交通大臣賞を受賞した」と成果を報告した。
「三菱商事との資本業務提携によって営業力と技術力のシナジー効果を発揮していく。世界全体で見ると急激な人口増加に伴うエネルギーとプラント建設の需要はこれからも増大する。また、資源のへき地化に伴ってコスト低下を狙ったプラントの大型化が進む一方、低品質の資源から環境規制に応じた高品質の製品を作るためのプラントの複雑化も進む。太陽エネルギーなども期待はされているが、現実には2030年レベルでエネルギーの8割は化石燃料に頼らざるを得ない実態があり、培ってきた技術が貢献できる」と今後の安定成長への期待を口にした。
来年3月期の業績予想は下方修正されたが、「業績と株価は過去40年間で3度の大きな上昇局面を体験している。顧客の設備投資の影響で13〜14年のスパンで推移しているが、ここ数年は底にあると言える」と強調。
「『エネルギーと環境の調和を目指して』が当社の理念を示すキャッチフレーズ。日本の景気や成長にはあまり左右されず、世界の『エネルギーと環境』の潮流に乗る銘柄」と支持を訴えた。
同日に開催された「第12回横浜マイスターまつり」の視察から駆け付けた林市長は、横浜の持つ魅力をたたえた後、自身の体験を基に「女性独自の感性や視点をビジネスに活かす」ことの重要性について語った。「自動車のセールスの経験から『お客さまは理屈でなく、感情で車を買う』ことに気が付いた。お客さまの心を包む丁寧なセールスが評価され実績につながった。以前、経営再建を任されたダイエーも現場で働く従業員は女性が多いが、経営陣はほとんどが男性。これは男女共同参画社会の時代に逆行している」と企業経営の在り方に提言を行った。
「いつの時代も人は心に響く言葉や感動を求める。男性はそれを真正面から取り上げることが少ないのではないか。今は経済合理性で語らざるを得ない時代で、経営者がぎりぎりの選択を迫られている。そこで『人は何のために生きているのか』という視点を忘れがちになる。自分の体験からの結論として、すべては人との信頼感だと感じている」と語り、「その気持ちを市政に反映したいと思い横浜市長に立候補した」と市政に対する意気込みへと続けた。
「行政は経営と似ている。何よりも重要なことは、毎日の市民の暮らしを感じること。そのためには女性の視点や感性が必要。男性の開拓精神に女性の包容力をうまくコラボレートさせ、人と直接向き合い、ふれあうことを大切にしたい。厳しい環境だからこそ、プロセスを大切にしてコミュニケーションし続けたい」とこれからの市政への決意を誓った。







